名前
pivot_root - root ファイルシステムを変更する
書式
int pivot_root(const char *new_root, const char *put_old);
説明
pivot_root() はカレントプロセスの root ファイルシステムを put_old ディレクトリに移動し、 new_root をカレントプロセスの新しい root ファイルシステムにする。
pivot_root() の典型的な利用法は、システムの起動中にシステムが一時的な root ファイルシステム (例えば initrd) をマウントし、これに続いて本当の root ファイルシステムをマウントし、 後者を必要な全てのプロセス・スレッドの カレント root に変更するような場合である。
古い root ディレクトリを使っていた全てのプロセスやスレッドの カレント root とカレントワーキングディレクトリ (cwd) を、 pivot_root() が変更するかどうかはわからない。 pivot_root() の呼びだしプロセスは、古い root / cwd を使っていたプロセスが、 いずれの場合でも正しく動作することを保証しなければならない。 これを簡単に行うには、それらのプロセスの root と cwd を pivot_root() を呼び出す前に new_root に変更しておくことである。
上記の段落は、将来 pivot_root() が変更されるかも知れないことを鑑みて、わざと曖昧に書いてある。 本ページを記述している時点では、 pivot_root() は古い root ディレクトリを用いている全てのプロセス・スレッドの root と cwd を new_root に変更する。これはカーネルのスレッドが古い root ディレクトリを busy 状態にしないために必要である。これらのスレッドが 古いディレクトリを root / cwd としていると、ファイルシステムに 一切アクセスしない場合でも古い root が busy になってしまうからである。 将来は、カーネルスレッドがあらゆるファイルシステムへのアクセスを 明示的に放棄するメカニズムができ、このでしゃばりな機能は pivot_root() から削除されるかもしれない。
これはカレントプロセスについても当てはまることに注意。 pivot_root() がカレントプロセスの cwd に影響するかどうかはわからない。 したがって pivot_root() の直後に chdir( / ) を呼び出すとよい。
new_root および put_old には以下の制限がある:
- | ディレクトリでなければならない。 |
- | new_root と put_old は現在の root と同じファイルシステムにあってはならない。 |
- | put_old は new_root 以下になければならない。すなわち put_old を差す文字列に 1 個以上の ../ を付けることによって new_root と同じディレクトリが得られなければならない。 |
- | 他のファイルシステムが put_old にマウントされていてはならない。 |
現在の root がマウントポイントではない (chroot(2) や pivot_root() の後など。以下も参照) 場合、 古い root ディレクトリではなく、 そのファイルシステムのマウントポイントが put_old にマウントされる。
new_root はマウントポイントでなくてもよい。 この場合 /proc/mounts は、 new_root を root (/) とするファイルシステムのマウントポイントを表示する。
返り値
成功すると 0 を返す。エラーが起ると -1 を返し、 errno が適切な値に設定される。
エラー
pivot_root() は stat(2) の返すあらゆるエラーを (errno に) 返す可能性がある。さらに以下を返すことがある:
EBUSY | new_root または put_old が、現在の root ファイルシステム上にあるか、既に put_old になんらかのファイルシステムがマウントされている。 |
EINVAL | put_old が new_root の下層にない。 |
ENOTDIR | |
new_root または put_old がディレクトリでない。 | |
EPERM | カレントプロセスが CAP_SYS_ADMIN ケーパビリティを持っていない。 |
バージョン
pivot_root() は Linux 2.3.41 で導入された。
準拠
pivot_root() は Linux に固有のものなので、移植性はない。
バグ
pivot_root() はシステムの他のプロセス全ての root と cwd とを変更しなくてもよいはずである。
pivot_root() の使い方がもうちょっと曖昧になると、 あっという間にわけのわからない状態になってしまうだろう
注意
glibc はこのシステムコールに対するラッパー関数を提供していない。 syscall(2) を使って呼び出すこと。