名前
rpcgen- RPC プロトコルコンパイラ
書式
rpcgen
infile
rpcgen [-D
name[=value
]] [-T] [-Ksecs] infile
rpcgen -c|-h|-l|-m|-t [-o
outfile]infile
rpcgen [-I] -s
nettype[-ooutfile
]infile
rpcgen -n
netid[-ooutfile
]infile
説明
rpcgenは RPC プロトコルを実装する C 言語のコードを生成するツールである。
rpcgenへの入力は RPC 言語 (遠隔手続き呼び出し言語 Remote Procedure Call Language) として知られる C 言語に似た言語である。
rpcgenは通常、1 つの入力ファイルを受け取って 4 つの出力ファイルを生成する、 第 1 の書式で使われる。 入力ファイル infile が
proto.xという名前である場合、
rpcgenはヘッダファイル
proto.h、 XDR ルーチン
proto_xdr.c、 サーバ側スタブ
proto_svc.c、 クライアント側スタブ
proto_clnt.cを生成する。
-Tオプションを指定すると、さらに RPC ディスパッチテーブル n
proto_tbl.iも生成する。
-Scオプションを指定すると、クライアント側での遠隔手続きの使用法を説明する サンプルコードも生成する。 このコードは
proto_client.cに書き出される。
-Ssオプションを指定すると、 遠隔手続きの書き方を説明するサンプルのサーバ用コードを生成する。 このコードは
proto_server.cに書き出される。
生成されたサーバは、 ポートモニタ (例えば
inetdや
listen) で起動することも、 それ自身で起動することもできる。 ポートモニタで起動される場合、 ファイルディスクリプタ
0を引き渡すトランスポートのためだけの サーバを生成する。 トランスポートの名前は環境変数
PM_TRANSPORTを設定することで指定しなければならない。
rpcgenで作成されたサーバが実行されると、 サーバは環境変数
NETPATHで指定された全てのトランスポート用にサーバハンドルを生成する。 環境変数
NETPATHが設定されていない場合、
/etc/netconfigファイルに記述された全ての可視トランスポート用にサーバハンドルを生成する。 注意: トランスポートはコンパイル時ではなく実行時に選択される。 サーバが自分自身で開始する場合、 デフォルトではバックグラウンド実行に移る。 サーバプロセスをフォアグラウンドで実行するには、 特殊定義シンボル
RPC_SVC_FGが使われる。
第 2 の書式は、より洗練された RPC サーバを生成する特別な機能を提供する。 これらの機能には、ユーザー定義の
#defineと RPC ディスパッチテーブルのサポートが含まれる。 RPC ディスパッチテーブルのエントリには以下のものがある。
o | その手続きに対応するサービスルーチンへのポインタ |
o | 入出力引き数へのポインタ |
o | これらのルーチンのサイズ |
上で示した他の 3 つの書式は、 全ての出力ファイルではなく、特定の 1 つのファイルが必要な場合に使われる。 いくつかの使用例が以下の「例」のセクションで説明されている。
rpcgenが
-sオプション付きで実行された場合、 特定クラスのトランスポート用のサーバを生成する。
-nオプション付きで実行された場合、 netid で指定したトランスポート用のサーバを生成する。 infile が指定されていない場合、
rpcgenは標準入力から入力を受け付ける。
入力ファイルが
rpcgenによって実際に処理される前に、C プリプロセッサ
cc -E[
cc(1) を参照] が実行される。
rpcgenは各タイプの出力ファイルに対して、
rpcgenプログラマが使う特別なプリプロセッサシンボルを定義する。
RPC_HDR | ヘッダファイルにコンパイルする際に定義される。 |
RPC_XDR | XDR ルーチンにコンパイルする際に定義される。 |
RPC_SVC | サーバ側スタブにコンパイルする際に定義される。 |
RPC_CLNT | クライアント側スタブにコンパイルする際に定義される。 |
RPC_TBL | RPC ディスパッチテーブルにコンパイルする際に定義される。 |
% で始まる全ての行は、
rpcgenに解釈されることなく、出力ファイルに直接そのまま渡される。
infile で参照される全てのデータタイプに対して、
rpcgenはデータタイプ名の前に
xdr_を付けた名前のルーチンが存在することを仮定する。 このルーチンが RPC/XDR ライブラリにない場合、 そのルーチンを提供しなければならない。 未定義のデータタイプを提供することで XDR ルーチンをカスタマイズすることができる。
以下のオプションが使用可能である。
-a | クライアント側とサーバ側のサンプルコードを含む全てのファイルを生成する。 |
-b | SunOS4.1 スタイルの RPC コードを生成する。 昔のコードとの互換性のためにある。これがデフォルトである。 |
-5 | SysVr4 スタイルの RPC コードを生成する。 これは Svr4 システムのトランスポート独立 RPC (Transport Independent RPC) で使われる。 デフォルトでは rpcgen は、SunOS4.1 スタイルの RPC コードを生成する。 |
-c | コンパイルして XDR ルーチンを生成する。 |
-C | ANSI C のコードを生成する。 このオプションは C++ コンパイラでもコンパイルできるコードを生成する。 これがデフォルトである。 |
-k | K&R C のコードを生成する。デフォルトは ANSI C である。 |
-Dname [=value ] | |
シンボル
name
を定義する。
ソース中の
#defineディレクティブと同じ。 value が与えられていない場合、 value は 1と定義される。 このオプションは複数回指定してもよい。 | |
-h | コンパイルして
C言語のデータ定義 (ヘッダファイル) を生成する。 RPC ディスパッチテーブルをサポートするヘッダファイルを生成したい場合は、 -Tオプションを同時に指定すること。 |
-I | inetd から起動できるサービスを生成する。
デフォルトでは、-sオプションで選択されるトランスポートを処理する、 静的サービスを生成する。 -Iを使うことで、サービスをどちらの方法でも起動できるようになる。 |
-Ksecs | |
デフォルトでは、rpcgenで生成されたサービスは、 リクエストを処理した後 120秒待って終了する。 この待機時間は -Kフラグを使って変更できる。 リクエストを処理した後すぐに終了するサーバを生成するには、 -K 0を指定すること。 決して終了しないサーバを生成するには、 適切な引き数である -K -1を指定すること。 | |
サーバをモニタリングしている場合、ある種のポートモニタ、例えば
listen(1M) のようなものは、サービスリクエストに応答して 常に 新しいプロセスを生成する。 サーバがそのようなモニタとともに使われることが分かっている場合、 サーバは処理の完了後すぐに終了すべきである。 そのようなサーバを生成するためには、 rpcgenを -K -1オプション付きで使うべきである。 | |
-l | コンパイルしてクライアント側スタブを生成する。 |
-m | コンパイルしてサーバ側スタブファイルを生成するが、 \(lqmain\(rq ルーチンは作成しない。 このオプションは、コールバックルーチンを作成する場合や、 初期化を行うために独自の \(lqmain\(rq ルーチンを記述する必要がある ユーザーにとって役に立つ。 |
-nnetid | コンパイルして netid で指定したトランスポート用のサーバ側スタブを生成する。 netconfig データベースに netid 用のエントリが存在する必要がある。 複数のトランスポートに対してサービスを行うサーバを作成するために、 このオプションを複数回指定することができる。 |
-N | 新しいスタイルの rpcgen を使う。手続きが複数の引き数を持てるようにする。 これはまた、C 言語にとてもよく似たパラメータ渡しの方法を用いる。 これにより、遠隔手続きに引き数を渡す場合に、引き数へのポインタではなく 引き数そのものを渡すことができる。 この動作は、以前のスタイルの rpcgen が生成したコードによるものとは異なる。 以前のものとの互換性のため、新しいスタイルはデフォルトになっていない。 |
-ooutfile | |
出力ファイル名を指定する。
何も指定されない場合、標準出力に書き出す
(-c, -h, -l, -m, -n, -s, -Sc, -Ss, -tモード時のみ)。 | |
-snettype | |
コンパイルして
nettype
クラスに属する全てのトランスポート用のサーバ側スタブを生成する。
サポートされているクラスは以下の通りである。
netpath, visible, circuit_n, circuit_v, datagram_n, datagram_v, tcp, udp[これらのクラスに関連づけられた意味については、 rpc(3N) を参照すること]。 このオプションは複数回指定することができる。 注意: トランスポートはコンパイル時ではなく実行時に選択される。 | |
-Sc | 遠隔手続きの使用法と、rpcgen で生成されたクライアント側スタブを 呼び出す前にサーバをバインドする方法を説明するサンプルコードを生成する。 |
-Ss | サーバ側遠隔手続きの骨組みとなるコードを生成する。 遠隔手続きの実際のコードを記述する必要がある。 |
-t | コンパイルして RPC ディスパッチテーブルを生成する。 |
-T | RPC ディスパッチテーブルをサポートするコードを生成する。 |
-c,
-h,
-l,
-m,
-s,
-tは、特定のタイプのファイルを生成するために、どれか 1 つを単独で使う。 一方、オプション
-Dと
-Tは、グローバルオプションで、他のオプションとともに使うことができる。
注意
RPC 言語は構造体の入れ子構造をサポートしない。 対処法として 同様の効果を得るために、構造体をトップレベルで宣言し、 その構造体名を他の構造体の中で使うことができる。
明確な名前スコープが実際に適応されていないため、 プログラム定義の使用中に名前の衝突が起きる場合がある。 この問題の大部分は、プログラム・バージョン・手続き・タイプに対して 固有の名前を付けることで回避できる。
-nオプションで生成されたサーバ用コードは、 netid で指定されたトランスポートを参照するので、 非常にサイト依存したものになる。
例
以下の例:
$ rpcgen -T prot.x | |
は 5 つのファイル:
prot.h, prot_clnt.c, prot_svc.c, prot_xdr.c, prot_tbl.iを生成する。 | |
以下の例では、C 言語のデータ定義 (ヘッダファイル) が標準出力に送られる。 | |
$ rpcgen -h prot.x | |
datagram_nクラスに属する全トランスポート用のサーバ側スタブのテストバージョン -DTESTを標準出力に書き出すためには、以下のようにすること: | |
$ rpcgen -s datagram_n -DTEST prot.x | |
netid
tcpで指定されたトランスポート用のサーバ側スタブを生成するためには、 以下のようにすること: | |
$ rpcgen -n tcp -o prot_svc.c prot.x | |
関連項目
cc(1)
翻訳者謝辞
この man ページの翻訳にあたり、 FreeBSD jpman project <http://www.jp.freebsd.org/man-jp/> による翻訳を参考にさせていただいた。