マニュアル - 章 1: rcsintro

名称


rcsintro - RCS 入門

解説


RCS (Revision Control System) は、ファイルのリビジョンを複数管理します。 RCS は格納、取り出し、ログ、識別、リビジョンの併合を自動化します。RCS は頻繁に更新されるテキスト、たとえば、プログラム、ドキュメント、 グラフィックス、論文、定型手紙等を扱うのに便利です。

基本的なユーザインタフェースはとても単純です。初心者は 2 つのコマンド、 ci(1)co(1) を覚えるだけで使用できます。 ci はチェックイン ‘‘check in’’ を省略した名前です。これは、ファイルの内容を 「RCS ファイル」と呼ばれる記録用のファイルに格納します。 RCS ファイルは、特定ファイルの全リビジョンを含んでいます。 co はチェックアウト‘‘check out’’ を省略した名前です。 これは、RCS ファイルからリビジョンを取り出します。

\&\s-1RCS\s0 の機能

o テキストの複数のリビジョンの保存と取り出しを行います。RCS は すべての古いリビジョンを効率的な方法で保存します。 ファイルを変更しても 元のリビジョンが失なわれることはなく、いずれも取り出すことが 可能です。リビジョンは、リビジョン番号、シンボル名、日付、作者、 状態を指定して取り出せます。
o 完全な変更の履歴を管理します。RCS は、すべての変更点を自動的に 記録します。各リビジョンの内容とともに、作者、チェックインした日時、 変更点を要約したログメッセージが記録されます。 ログによって、どのような変更が行われたのかがひと目でわかります。 ソースリストを見比べたり、一緒に作業している プログラマにたずねたりする必要はありません。
o アクセス矛盾を解決します。複数のプログラマがあるファイルの 同じリビジョンに対して変更を加えようとした場合、 RCS は警告を発し、他者が行った変更を台無しにしてしまう のを防ぎます。
o リビジョンの木を管理します。RCS はモジュールごとに独立した 開発ラインを管理できます。 RCS は、リビジョンの系図を表現した木を保存します。
o リビジョンを併合し、矛盾を解決します。あるモジュールの 2 つの リビジョンを併合することができます。 併合しようとする 2 つのリビジョンが、あるコードの同じ部分に 対する変更を含んでいた場合、RCS は変更が重複していると警告します。
o リリースと構成を管理します。リビジョンにはシンボル名を つけることができます。また、「リリース版(released)」、「安定版(stable)」、 「実験版(experimental)」といった状態をつけることもできます。 これにより、単純かつ直接的にモジュールの構成を表すことができます
o リビジョン番号、作成日時、作者等を自動的に識別することができます。 識別情報は、消印のようにテキストの適当な場所に埋め込むことが できます。これにより、あるソフトウェアの構成に どのモジュールのどのリビジョンが使用されているかを 判断することが容易になります。
o 必要なディスク容量を最小にします。RCS は、リビジョンのために 最小のスペース(差分のみ)しか消費しません。もし途中のリビジョンが 削除されたなら、記録されていた差分もそれに従って小さくなります。

\&\s-1RCS\s0 事始め

RCS の管理下に置きたい f.c というファイルがあるとします。もし、まだ作成していなければ、 RCS ディレクトリを以下のコマンドにより作成します。
mkdir RCS
次に ci (チェックイン) コマンドを実行します。
ci f.c
これにより、 f.c の内容をリビジョン 1.1 として記録 した RCS ファイルが RCS ディレクトリ内に 作成され、 f.c は削除されます。また、 cif.c に 関する説明文の入力を促します。 説明文にはファイルの内容を要約して書きます。 以降 ci を実行するたびに、ファイルに加えた変更の要約を入力するように促します。
RCS ディレクトリにあるファイルは RCS ファイルと呼ばれ、 それ以外のファイルはワークファイルと 呼ばれます。先の例で挙げたワークファイル f.c を取り戻す には co (チェックアウト) コマンドを実行します。
co f.c
このコマンドは RCS ファイル中の最新のリビジョンを取り出してファイル f.c に書き出します。 もし、 f.c に変更を加えたければ、次のコマンドを使ってチェックアウトしロック しなければいけません。
co -l f.c
これで f.c を編集することができます。
ある程度編集したところで、どのような変更を加えたか 知りたくなるときがあります。 この場合は、以下のコマンドを実行します。
rcsdiff f.c
このコマンドは、最後にチェックインしたリビジョンと ワークファイルの違いを表示します。編集が終わったら、 以下のコマンドにより、もう一度チェックインすることができます。
ci f.c
これにより、リビジョン番号が自動的に付け直されます。
もし ci
ci error: no lock set by your name
というエラーメッセージを出力したなら、 それは、ロックせずにチェックアウトしたファイルを チェックインしようとしたからです。もちろん、 ここでロックしチェックアウトし直すのでは遅すぎます。 ここでチェックアウトすると、あなたが行った編集は 上書きされて失われてしまうからです。 かわりに、以下のコマンドを実行します。
rcs -l f.c
これは、ほかに誰もロックしていなければ、最新のリビジョンを ロックします。もし、すでに誰かがロックしてしまっていたなら、 その人と相談しなければなりません。
ロックすることにより、あなただけがファイルを更新(チェックイン) できるようになり、同時に複数の人が同じファイルを編集する際の 厄介な問題を回避することができます。たとえリビジョンが ロックされていても、そのファイルをチェックアウトして内容を見たり、 コンパイルすることは可能です。ロック機構は、ロックした人 以外が チェックイン できないようにするだけです。
もし扱う RCS ファイルが個人的なもの、すなわち そのファイルに対して新しいリビジョンをチェックインするのが あなただけである場合、厳格なロック機構は必要ないでしょう。 厳格なロック機構はオフにすることもできます。 もし厳格なロックモードがオフになっているなら、 RCS ファイルの所有者はロックしていないファイルをチェックイン することができます(それ以外の人はロックが必要です)。 厳格なロックモードのオンとオフは、 それぞれ以下のコマンドにより行います。
rcs -L f.c 及び rcs -U f.c
もしワークディレクトリに RCS ファイルをまき散らしたく ないなら、RCS という名前のディレクトリを作成し、RCS ファイルを すべてその下に移動します。RCS コマンドは RCS ファイルを探すとき、 まず、 RCS ディレクトリを検索します。この場合も、これまでに述べてきたコマンドは 引数をいっさい変更せずに実行できます(実際は RCSRCS ファイルと ワークファイルの対を指示する方法は 3 通りあります: (a) 両方を指定する、(b) ワークファイルのみを指定する、 (c) RCS ファイルのみを指定する。RCS ファイルとワークファイルは 自由なパスに置くことができますが、RCS コマンドはファイルの対を インテリジェントに探します)。
チェックインしたときにワークファイルが削除されないようにする (編集を続けたり、コンパイルしたりする場合)には以下のコマンドを使います。
ci -l f.c あるいは ci -u f.c
これらのコマンドは通常どおり f.c をチェックインします。しかし、自動的にチェックアウトも行います。 最初の例ではロックを行い、2 番目の例ではロックを行いません。 このようにすればチェックアウト操作を 1 回省けます。 最初の例は編集を続ける場合に、2 番目の例は単にファイルを 読みたかったりコンパイルしたりする場合に便利です。どちらの場合も、 ワークファイル中の識別用マーカ(後述)が更新されます。
ci にチェックインするリビジョンの番号を指定することができます。 それまでのリビジョンが 1.1、1.2、1.3... だったときに、以下の コマンドによりリリース2 を開始することができます。
ci -r2 f.c あるいは ci -r2.1 f.c
これにより、新しいリビジョンには番号 2.1 がつけられます。以降、 ci はこの ファイルの新しいリビジョンに 2.2、2.3...と番号をつけていきます。 対応した以下の co コマンド
co -r2 f.c 及び co -r2.1 f.c
は、リビジョン番号が 2.x である最新のリビジョン、リビジョン 2.1 をそれぞれ チェックアウトします。 co にリビジョン番号を指定しない場合、幹(trunk)の上の最新のリビジョン (すなわち、x.x の形式で最大のリビジョン番号を持つリビジョン)が チェックアウトされます。リビジョンの枝(branch)を用いるためには 3 つ 以上の番号が必要になります。 たとえば、1.3 から枝を作成するには、以下のコマンドを実行します。
ci -r1.3.1 f.c
これにより、リビジョン 1.3 上に番号 1 の枝を作成し、 枝上の最新リビジョンとして 1.3.1.1 を割り当てます。 枝の詳細については rcsfile(5) を参照してください。

自動識別

RCS は、リビジョンの識別のために特別な文字列をソースや オブジェクトコードに埋め込むことができます。 リビジョンの識別を行うためには、以下の文字列(マーク)
$Id$
をコメントなどのテキスト部分に書きます。 RCS は、このマークを次の形式の文字列に置換します。
$Id: ファイル名 リビジョン 日付 時刻 作者 状態 $
このようなマークをモジュールのソースコードの 1 ページ目に 置くことにより、編集しているファイルのリビジョンを すぐに判断することができます。RCS はマークの更新を自動的に行います。 マークをオブジェクトコードに組み込むには、それをリテラルな 文字列中に含めます。C 言語では、以下のようにします。
static char rcsid[] = "$Id$";
ident コマンドは、オブジェクトファイルやダンプ出力からもマークを探し表示することが できます。従って ident コマンドを用いることにより、あるプログラムがどのモジュールの どのリビジョンによって作成されたかを知ることができます。

マーク $Log$ をテキストやコメント内に含めることも有用かもしれません。 このマークはチェックインのときに要求されたログを蓄えていきます。 これにより、変更の履歴を直接、ファイルに記録することができます。 RCS にはほかにもいくつかのマークがあります。詳しくは co(1) を参照してください。

作者


Author: Walter F. Tichy. Manual Page Revision: 1.5; Release Date: 1999/08/27. Copyright © 1982, 1988, 1989 Walter F. Tichy. Copyright © 1990, 1991, 1992, 1993 Paul Eggert.

関連項目


ci(1), co(1), ident(1), rcs(1), rcsdiff(1), rcsintro(1), rcsmerge(1), rlog(1) Walter F. Tichy, RCS—A System for Version Control, Software—Practice & Experience 15, 7 (July 1985), 637-654.

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